「離島移住に興味はあるけど、まずは地域の人に話を聞いてから決めたい」
「環境を変えて仕事をしたいけどハードルが高い」
誰でも「好きな場所」で働ける時代になりましたが、このような悩みは尽きません。
そこで今回は島の暮らしにあこがれて、沖縄県の離島で移住体験プログラムに参加してきました。
場所は沖縄県の北部に位置する「伊江島」(いえじま)。本島北部の本部港からフェリーで約30分の位置にあります。
島の中央付近に、伊江島タッチューと呼ばれる岩山があり、美ら海水族館からもその姿が見えるので、見たことがあるという人も多いのではないでしょうか。
人口は約4,000人、1周約20kmの島ですが、そんな島の暮らしにあこがれて、5泊6日の移住体験プログラムに参加してきたので、そのときの様子をご紹介します。
「伊江島」は、そこで関わる人が皆温かく、家族のように優しく接してくれて、まだ移住もしていないのに、そこはまるで”家”そのものでした。

石垣島出身、本島育ちの生粋のウチナーンチュ。個人ブログ「てんしょうブログ」にて沖縄の音楽の魅力を発信中。伊江島出身のシンガーソングライター『Anly』に魅せられて伊江島に夢中。
移住体験プログラムとは
伊江島移住体験プログラムとは、伊江村役場が運営している「移住検討者向けの企画」です。
・プログラムの生活体験を通して、移住後の「暮らし」「仕事」「人との関わり方」をイメージする
・地域コミュニティの参加の意思、地域との相性の確認する
・事前のヒヤリングをもとに滞在中の行程を決定し、島での生活を疑似体験する
ことを目的としたプログラムです。
ようするに、島で生活をしながら、役場の移住コーディネーターさんが間に入って、島で生活する方達と繋いでくれるので、短い期間でも、濃密な移住疑似体験をすることができます。
要するに、「役場の方が移住体験者と島民との間に入るので、短期間でも濃密な移住体験をすることができる」プロジェクトとなっています。
伊江島の絶景スポット3つ

BIG FORTH号(ミニジープ)で島の風に当たりながら、伊江島を1周してきたので、特に気に入ったスポットを3つ紹介します。
お気に入りスポット①「湧出(ワジー)」

島の北西部に位置する「湧出(ワジー)」は、その名の通り波打ち際から真水が湧き出ることから名付けられています。
今でも生活用水として使用され、湧出の良質な水を使った「伊江ソーダ」や、「伊江島スパークリングウォーター」などの商品も出ています。
湧出展望台からの景色はとても綺麗で、青い海と水平線を広く見渡せます。また、高さ60mを超える断崖絶壁と、そこに打ち寄せる波の迫力は圧巻で、大自然の力を味わえます。
この景色は、潮の満ち引きや天気によってもその姿を変えるので、変化を楽しみながら何度訪れても新しい感動を与えてくれるでしょう。

道は狭くなりますが、湧水が出ている場所にも行くことができるので、BIG FORTH号のスリムさを活かして向かってみました。
展望台からは見下ろしていた断崖絶壁を見上げるのもこれまた圧巻です。また、岩場の方から湧き出る水が数カ所あって、自然の神秘を味わえました。
お気に入りスポット②「夕日の丘」

島の西部に位置する農道の途中に「夕日の丘」と呼ばれるスポットがあり、晴れた日には水平線に沈む夕日を眺めることができます。
日の入り時刻に行くのがオススメですが、昼間でも植物の緑と海の青のコントラストがとても綺麗です。
ただし、道中、道幅は狭く特に整備はされていない農道になので気をつけていきましょう。
お気に入りスポット③「GIビーチ」

島の南西部に位置するビーチで、沖縄が米軍の占領下におかれていた時代に、米軍将校専用のビーチだったことから「GIビーチ」と呼ばれています。白い砂浜が広がる天然ビーチで、透き通った海の色がとても綺麗です。
人がほとんど管理することなく自然のままの姿が残っているので、小笠原諸島の海底火山噴火の影響で漂着した軽石もそのまま残されていました。
沖縄本島とでは、観光客がたくさんいるようなビーチでも、伊江島ではほぼ貸切状態で楽しむことができます。
伊江島に住むと、こういった場所や景色をいつでも楽しめるのは、とても魅力的ですよね!
本島と離島の比較
沖縄本島と離島の比較と一言で言っても、沖縄には160の島が点在し、人の住んでいる離島は37島です(2018年1月現在)。
島の大きさや人口、距離、そこに根付く伝統や文化によってもその島の雰囲気は変わってくるので、一概に比較はできません。
離島のデメリット
ただ、共通して言えるデメリットとして、物流は本島から離島に向けて流れているので、基本的にモノが届くのには時間がかかります。
例えば、週刊少年ジャンプの発売日が、本土の大半では土曜日ですが、沖縄本島では火曜日で、離島となるとさらに遅くなります。また、通販の送料無料のエリアに、「一部地域を除きます。」と書かれていた場合、かなり高確率で除かれるでしょう。
さらには、台風などで物流が止まってしまうリスクもあります。数日であれば、さほど問題はないかもしれませんが、長期間になるとスーパーや売店から食料が無くなったり、その間は自分自身も移動できなくなることにも注意しなければなりません。
離島のメリット
一方メリットとしては、離島には、海や緑地といった自然がそのまま残されていていること。いわゆる昔ながらの沖縄を感じられる場所が多いです。
本島は那覇市を中心に都会化されていて、車社会のため渋滞が発生したり、有名な観光地にはたくさんの人が集まり、ゆったりできないこともあります。離島では、渋滞や人混みを気にすることなく、ゆったりとした時間を過ごせるのが魅力です。
伊江島での生活をイメージしてみる

それでは、体験を通してお話を聞いたことや現地での気づきをもとに、伊江島での生活をイメージしてみます。
地理的特徴から見る伊江島の暮らし
まず、伊江島は1周約20kmと小さな島で、車で10分〜20分あれば、島のどこにでも移動できます。
そんな、比較的近い距離の中に、コンビニ(ファミリーマート)が2つ、大きめのスーパー(JA)があり、日用雑貨や、食料品を買うのに不自由することはありません。
また、どの時間帯に移動しても渋滞にかかるということはありませんでした。
通勤や買い物などで移動する際に、ほとんどストレスがかからないのは大きなメリットだと思います。
しかし、離島であるがゆえのデメリットの一つに「交通の便」があります。
実際、私が滞在中も台風が直撃してしまい、沖縄本島と繋ぐフェリーが約1日半欠航してしまいました。幸いその間はフェリーを利用する予定もなく、足止めを食らうということはなかったのですが、仕事などで本島への移動を計画する場合は、波の状況にも気を配りながら動いていく必要がありそうです。
実際台風で家にこもっている間、フェリーの欠航や再会の情報は、各家庭に設置されている防災無線で最新の情報を知らせてくれるので、その点は親切だと感じました。
そんな、本島や県外とのアクセスには、少し不便な点がある伊江島。
しかし明るいニュースもあります。現在活用されずに残っている伊江島空港を再整備し、沖縄北部空港として沖縄県北部の玄関口として活用する「沖縄ツインゲートウェイ構想」も出ているようです。
あわせて、伊江島ー本島間をトンネルまたは橋でつないで整備するというもので、実現した場合、本島、県外へのアクセスが非常に良くなりそうです。
運動習慣がついて健康寿命が伸びるかも
私が、個人的伊江島への移住を検討する上で、魅力的に感じたのは伊江島に住むと、ジムが非常に低価格で通えるということです。
というのも、2016年から2018年にかけて、野球場や多目的屋内運動場、体育館などの施設が建て替え、新設され、プロ球団ジャイアンツが練習に使用するなど、非常に質の高い設備が揃っています。その中でも体育館内に設置された、ジムスペースとプールは、島民の健康増進に役立っているようです。
驚くのはその価格で、6,000円で年間パスポートを購入すると、ジムとプールの施設が使い放題になります。安いジムでも月1万円(年間に換算すると12万円)近くかかるので、破格だと思います。
また、体育館ではサークル活動を行なっていて、曜日ごとにバスケットやバレーボール、スポンジテニスなどの活動が行われています。私も滞在中バドミントンのサークルにお邪魔しました。非常にレベルが高く、熱い打ち合いをしながら汗水を流して、休憩中はおしゃべりを楽しみました。
他にも、伊江島には字対抗で行う伊江村陸上競技大会というものがあり、これがどの地区も全力で挑む真剣勝負になるそうです。
また、毎年4月ごろに開催される伊江島マラソンもあります。最長20kmのハーフマラソンになりますが、その日は普段立ち入ることのできない基地内もランニングコースに入れられていて、綺麗な景色を眺めながらのマラソンは非常に魅力的です。
島民同士の繋がりが強い島
伊江島の規模は、石垣島と比較すると面積は約10分の1、人口は12分の1ほどです。
そのため、島民同士のつながりが非常に強く、人との距離が近く感じる島だと思います。また、島民はうわさ話が好きで、島で起こった出来事は人づてにすぐに広まっていくそうです。
仮に伊江島に移住した場合、そこに移り住んできた人がどんな人なのかみんな気にかけてくるでしょうし、すぐにその情報は広まっていくと思います。また、良い噂はあまり広まらないのに、悪い噂は瞬く間に広がっていく傾向があるんだとか…
一方、人との距離が近いというのは悪い面だけでなく、良い面もたくさんあります。とある移住者の方にお話を聞くと、仲良くなったら野菜や魚介類などのお裾分けを貰えるので、ほとんど食材を買う必要がなくなったそうです。
また、長く住んでいくうちに知り合いも増えて、居酒屋などのお店に1人で行っても、そこには知り合いがたくさんいてワイワイ楽しめるというのも島ならではの楽しみ方だと思います。
伊江島の特徴

ここで、もう一度伊江島にフォーカスを当ててみましょう。島には、スーパーやコンビニがあり、生活するのに困らないほどの生活基盤が整っていますが、映画館やゲームセンターといった都会のような娯楽はありません。
しかし、海や山など自然のレジャーが好きな人にとってはたまらない場所でしょう。伊江村民になればフェリーが半額以下で利用できるので、移動のハードルは低くなり、週末は沖縄本島でゆったり過ごすことも可能です。
伊江島は、良く言えば助け合える島であり、悪く言えば、周囲からの目が気になってしまうこともあると思います。コミュニティーは比較的狭く、長く住むほど生活圏内で顔見知りの人がどんどん増えていくかもしれません。
離島で一人スローライフを送りたいという人にはあまり向かないかもしれませんが、島の人と関わったり繋がりをもって人生を楽しんでいきたいという人には、ぴったりな場所だと思います。
まとめ
今回の伊江島移住体験プログラムでは、初めてお会いした人でも、とても優しく島のことを教えてくれたり、「また帰って来てね」と言ってくれたり、家族のように迎え入れてくれる人が多かったのが印象的でした。振り返ると、伊江島自体が“家”そのものだったように思います。
人と人との距離が近く、島の文化を受け入れながら、コミュニティーの中で第二の人生を歩んでいきたいという方は、伊江島をはじめ離島への移住を検討してみてはいかがでしょうか。。その際は、ぜひ島を訪れて、そこで暮らす人とコミュニケーションをとり、交流を深めてみると何か新しい発見があるかもしれません。
今回の記事が沖縄への移住、特に離島への移住を検討している方の参考になれば幸いです。