リノベーション×空間デザインで、廃業ホテルが蘇る!「YANBARU HOSTEL」とは?

「中古物件を購入して、リノベーションしたい。」
だけど、築何年の建物までリノベーションできるの?
リノベーションでどこまで物件が生まれ変わるのか想像がつかない……
マイホームを計画中の方の中には、そう考えている人も多いのではないでしょうか?
そんな時は、住居向けの物件だけでなくショップやホテルなど様々なリノベーション物件に実際に足を運んでみるのがオススメ。
リノベーションの魅力とその実力を気軽に見て触れられるので、リノベーション後の想像がつきやすく、休日の楽しみにもなるんです◎
一味違うリノベ空間を沖縄で体験したい、という方にオススメなのが、築48年の廃業したホテルをリノベーションして完成した「YANBARU HOSTEL(ヤンバルホステル)」。
一般住宅ではありませんが、リノベーションと空間デザインによって築古物件がここまでオシャレに生まれ変わるんだ、ということを体感できますよ。
YANBARU HOSTEL(ヤンバルホステル)とは?
世界自然遺産へ登録されている、豊かな自然が広がる沖縄本島やんばるエリア。そんな大自然の中にある”辺土名(へんとな)”という小さな集落にYANBARU HOSTELはあります。
クリエイティブプロデューサーでもあるオーナーさんが、廃業になった築40年越えのホテルを買い取り、リノベーション。外観は昔の面影が残るシンプルな印象ですが、一歩ホテルの中へ足を踏み入れると、そこには別世界が広がっていました。
ヤンバルホステルの中をご紹介。
ドアを抜けると……



1階はエントランス。ゆったりとくつろげるラウンジだけでなく、作業ができるワークスペースやイベントなどで使われるDJブース、実際に遊べるプレイスペースなど、様々なスポットが用意されています。
これだけ魅力的な要素が詰まったホテルなら、ホテルの中を遊び尽くすのも楽しそうですね◎
お次は2階へ……





2階は宿泊者が自由に使えるコモンキッチンとダイニング。コンビニで買ってきたアイスをここで食べるだけでも、いつもと違った特別さを味わえそう◎
気になるヤンバルホステルの客室もチェック!

YANBARU HOSTELには大きく分けて、「ドミトリールーム・ツインルーム・ファミリースイート」の3種類の客室が用意されています。今回はその中からツインルームの一室をご紹介いたします!
ひたすらクールなツインルーム




ツインルームは、見渡す限りのクールな空間!
壁も床もコンクリート打ちっ放しの空間に、木のフロアベッドやロッキングチェアにラグなど、温もりのあるアイテムが配置されています。
この異素材同士のミックスがとっても素敵なんですよね。
他のどんな場所でも味わえない、非日常を感じられます◎

ヤンバルホステルのプロデューサー「小山健一郎」さんへインタビュー!
このように、古さをただ新しくするだけでなく、リノベーションに空間デザインの力を加え、沖縄の風土と文化を活かした、唯一無二の独特な世界観がこのホテルの魅力なんです◎
今回は、そんなホテルの再生をプロデュースした小山健一郎さんに、YANBARU HOSTELのこだわりやリノベーションの魅力をお伺いしてきました!
ヤンバルホステルのコンセプト 「沖縄ヴィンテージ」とは?

このホテルのリノベーションでこだわったポイントは?
いちばんこだわったのは全体像というか、「ブランドの方向性」ですね。
沖縄ってすごい歴史の深い場所なんですけど、京都ほどスタイルが決まってない。
ちょっとネガティブな言い方をすると「海沿いになにかを造っていたらいい」という感じになってしまっている。
そんな中で、新しいデザインのスタイルを創ることができたら……と考えました。
このホテルは築40年を超えていました。それこそ沖縄ヴィンテージだよね!と感じたのをキッカケに、それをコンセプトとして全体像の設計に入っていきました。
もちろん細かいこだわりもたくさんありますが、いちばんこだわったのはそこですね。
沖縄ヴィンテージってとてもいいですね!
ちなみに、細部へのこだわりで思い入れがあるところはありますか?
そうですね、こういった壁にあるサインなどは自分でペイントをしたので、思い入れがありますね。
細かいこだわりとしては……空気感を伝えるのが非常に難しくて。
例えば、ビリヤード台のそばに椅子をひとつ、ポンッと置いているんですが……
あれは「ビリヤードをしているメンズを退屈そうに待つ女性」をイメージしています。そういった「空間をより鮮明にイメージできるセレクト」をして、要所要所に入れていっています。
小山氏のこだわりが随所に見られるこのホテル。先程ご紹介したお部屋だけでなく、ひとつひとつ全く雰囲気が違うお部屋がいくつも用意されています。
「この空間にはどんなストーリーがあるのだろう?」そんな想像をしながらこのホテルでの時間を過ごすことで、より一層空間を楽しむことができそうですね◎
リノベーションで「古さを良さに変えるポイント」とは?
ホテルのブランドサイトには「古さを良さに変えるようにデザインされたホテル」だと書かれています。どんな場所にその特徴が表れていますか?
例えば、エントランスの床ですかね!
コンクリートの躯体はそのままに、その上からイタリアのタイルをプラスしてます。
ああいう物を入れるだけで、古いはずのコンクリートが良く見える。
受付カウンターもイタリアの物ですし、家具などもアメリカやヨーロッパからセレクトしていたりと、古さと見た目の目新しさのバランスを取ることがポイントですかね。
独特な世界観が特徴的ですね!
こういった内装はどんなところからインスピレーションを受けたのでしょうか?
まず、築年数がだいぶ経っていたので、ヴィンテージ要素を取り入れようと考えました。
そして、この建物が立てられたのが1973年。
ちょうどアメリカからの返還期に建てられているので、その時代背景とのバランスも意識しました。
建物が建てられた時代の歴史も感じられるように内装を創られていらっしゃるんですね!
まるで小説のような、廃業ホテル復活ストーリー
小山さんがやんばるの廃業ホテルを再生しようと思ったきっかけは何ですか?
元々、ここにこういうホテルがあるとは知りませんでした。
僕が子どもを連れて辺土名村夏祭りに参加していたら、ひとりのおじちゃんが「おう!兄ちゃん、この辺の人ちゃうな〜!どっからきたんや?」と話しかけてきたんです。
「僕、大阪で国頭村の女性と結婚してこっちにきてるんですよ〜。」
おじさんは何をしてるのか聞いてみると「ちょっと先にある国頭ホテルをやってる、オーナーやねん。」って言うので……
「おっちゃん、そのホテル、良かったら僕にくださいよ〜。」と聞いてみました。
すると「うちは業者さんが泊まってくれていたからなんとかやっていけてた、それやったからここ廃業してん」って教えてくれたんですよ。
その後、そのまま祭りを楽しんでいたら村長さんと副村長さんに出会ったので「廃業したホテルを買い取りたい」と伝えました。
ストレートですね。笑
欲しかったので、素直に欲しいと伝えました。
その時はスルーされたんですが、後日「3日後、役場に来て欲しい」と電話がありました。
そこから3日でプレゼンテーションを用意して。収支計画も立てて持って行きました。
それが動き出したきっかけですね。

3日……!すごいスピード感ですね。
このホテルを見た瞬間に「欲しい!」って思えたんですか?
思いましたね!
以前からホテルをつくりたいという想いはあったんですか?
ありました!
ホテルというのは色んなデザインを集約していて。
グラフィックデザインや照明などの色んなデザインの要素があって、さらに加えてコミュニティや飲食、イベント、動画撮影など、もう本当にいろ〜んなデザインが集約しているんです。
なので、ホテルを作ることはある意味デザインを生業としている人間の集大成とイメージしていたので、いつかは挑戦したいと思ってました。
強く思い続けていた、とかではないのですが……
そんな中で急な出会いがあり、様々なタイミングが重なって、このホテルができたんですね。
様々なタイミングが重なって生まれた、このYANBARU HOSTEL。
小山さんが奥さんと結婚してなかったら、そして奥さんが国頭の方でなかったら、YANBARU HOSTELは今ここに無かったのだと思うと、感慨深いですね!
マイホームの参考に!プロが教える空間づくりのポイントとは?
これから中古物件をリノベーションしたいという方が、空間を作っていく際に参考にできる、「空間作りのプロ目線」からのアドバイスはありますか?
みんなとにかく「新しくしたらいいと思っている」んですよね。
それで、お金をかけて良くない方向に行くのだけは気をつけた方がいいですね。
このホテルのように、古さを残したままでも美しくできるので、”コスト”と ”デザイン”と”機能性”のバランスをしっかり考えた方が良いですね。
それはちょっとセンスも必要かもしれませんね。笑
そうですね!笑
たしかに難しいかもしれないですね。
残すところと、新しくするところのバランス。
それがリノベーションの肝になってきますが、とはいえ素人がそれを自分で判断するのは難しいのが現実。
やはりそこはプロに相談するのがオススメ。
デザインに関する困りごとの相談ができる施工会社や設計事務所も多くあります。
事前に自分のイメージと「古さと新しさのバランスを取りたい」ということを伝えるようにしましょう!
放置≠守ること。再生のプロが考える、沖縄のリノベーションに必要なこととは?

沖縄はまだまだリノベーションするという文化がないのですが、プロである小山さんから見て、もっとリノベーション文化が根付いたらいいなと思いますか?
根付いたらいいというか……標準で取り入れるべきです。
根付いていないのはデザイナーがいないからなのか何なのか原因は分かりませんが、リセットして新しくするのではなく、伝統を引き継いでいって欲しいなという想いはあります。
仏壇があるからと空き家のままにしておく。
それはたしかに先代を大切にする行動であることは間違いないですが、それだとアップデートがされない。
そこに違う人が暮らして、違うコミュニティが生まれて、村として街としてアップデートされていく事が大事だと思います。
自分の住まいを住みやすくするという観点も大事なんですが、リノベーションを通して歴史を造っていくという観点で、もう少し視野を広げて家のことを考えてもらえたら面白いなと思います。
個々人よりもコミュニティで動きがあった方が普及しやすそうですね。
そうですね、文化を継承して本当に遠い未来まで考えていくのが街づくりだと思うので、本当に仏壇を大事にしたいなら、アップデートが必要だと思います。
さいごに

今回はリノベーションについて、空間づくりのプロである小山氏からたくさんの貴重なお話が伺えました。
少し専門的な内容もあったと思いますが「古さを打ち消すのではなく良さに変えていく」リノベーションの魅力が伝わったのではないかと思います。
とはいえ、百聞は一見に如かず!
ぜひ、YANBARU HOSTELに足を運んで、リノベーションの実力と洗練された空間、そしてそこで味わえる非日常を体験してみてくださいね◎

クリエイティブプロデューサー | 小山 健一郎
YANBARU HOSTEL オーナー
株式会社ARCHITECTS&BOTANICAL 代表取締役